『日本留学を通じ、日本人の哲学を学びました』

モンゴルには日本留学経験者が多く、道を歩いているとふいに日本語で話しかけられることも。今回は、立命館アジア太平洋大学へ留学経験のあるジャフランさんへのインタビューをご紹介します。

―まずは、ジャフランさんの日本留学について聞かせて下さい。日本留学のきっかけはなんでしたか?

ジャフラン:もともと海外留学に憧れがあり、親戚から立命館アジア太平洋大学は学費全額免除の奨学金があると聞いて、留学を決意しました。

実は、留学前は日本についてほとんど知らなかったんです。知っていたのは、ドラマ「おしん」と「ひとつ屋根の下」と大相撲だけ。2001年頃からモンゴルでも同時通訳でNHKの相撲中継が見られるようになりました。「おしん」が日本のイメージだったので、日本人は苦労してばかりで可哀そうだなと思っていました。「ひとつ屋根の下」の影響もあって、日本では兄弟が多くてご飯もろくに食べられない、貧乏な生活なのかなぁと・・・(笑)

―「おしん」を観たら、確かに辛く苦しい生活が待っていそうですよね(笑)実際に行ってみて、日本に対する印象は変わりましたか?

ジャフラン:とても発展していて、全てが清潔で整理されていることにカルチャーショックを受けました。2007年の3月に福岡に到着したときのことは今でもはっきり覚えています。別府公園で入学式を行ったとき、ちょうど桜が満開で。その頃は季節毎に咲く花が違うことも知らなかったので、桜は年中咲くものだと思っていましたね。

―日本人に対する印象はいかがですか?

最初の2年間は言語の問題もあってコミュニケーションが取れず、どんな人達なのかよく分かりませんでした。日本語知識ゼロで行ったので、最初はホームステイ先でも電子辞書を使って会話していたのですが、日本語を完璧にマスターするという目標があったので猛勉強しました。日本語ができるようになってからはアルバイトも始めました。働くという経験を通じて、日本人は時間に正確で真面目な性格なんだということが分かりましたね。日本人の哲学、考え方にも慣れていきました。

―日本人とモンゴル人は、顔は似ていますが、考え方や時間の感覚は随分違いますよね。私自身も、モンゴルへ留学したときに実感しました・・・ジャフランさんの大学生活について教えていただけますか?

最初の3カ月は寮生活で、そのあとはバングラデシュの友人らとルームシェアをしていました。立命館アジア太平洋大学は外国人留学生が多いので、他国の色々な文化や考え方を学べました。留学仲間と夜ビールを一緒に飲んだり、将来の夢について語り合ったのが1番の思い出ですね。

当時は、モンゴル人留学生も130名ほどいたのですが、今は20名くらいと聞いています。以前は費用の80%以上をカバーする奨学金があったのですが、今の奨学金は50%しかカバーできないそうです。日本とモンゴルは物価も違いますし、奨学金が減額されてしまうと、モンゴルから日本へ留学するのは難しいですね。

私の周りはモンゴル人の仲間が多い環境でしたが、どうしても日本語をマスターしたかったので、モンゴル人とばかり付き合うのではなく、日本人や他国の留学仲間と交流することを常に心がけていました。

―留学中はホームステイも体験されたんですよね?

週末だけ湯布院にあるホストファミリーのお宅にホームステイをしていました。ホストファミリーにとっても、私が初めての留学生だったんです。受け入れるときは(ホストファミリーの)お父さん、お母さんも初めての留学生受け入れで心配していたらしいのですが、とても良い関係が築けました。10年経った今でも多くの留学生を受け入れていると聞き、すごく嬉しかったですね。お父さんは厳しいけど、すごく愛情深くて豪快な人です。お風呂の入り方やご飯の食べ方、近所の人への挨拶の仕方などを教わったほかにも、日本人の考え方もお父さんから学びました。一度、日本人なら醤油をかけないような食べ物に醤油をかけてしまい、「そんなことしたら、作った人に美味しくないと言っているようなもんだ!」と怒られましたね。モンゴルだったら「各自好きに食べればいい」と思うけど、日本では作った人のことを考える。日本人の相手を思いやる心が表れていると思います。このような違いに戸惑ったこともありましたが、大切なことをたくさん教えてもらいました。ホストファミリーとは今でも連絡を取り合っています。

―10年経った今でも関係が続いているのは素敵ですね。日本文化や日本人の考え方について留学経験を通じて学べたとのことですが、モンゴル人と日本人の似ていると思うところ、違うと思うところを教えてください。

似ているのは、聞き上手なところでしょうか。モンゴル人も日本人も穏やかで、冷静に話を聞く印象があります。あとは、身近な人に何かあったときには親身になるところ、無駄な贅沢はせずに節約して、物を大事にするところも似ていると思います。

違うと思うところは、時間と約束を守るかどうか。日本人は必ず時間を守るし、約束した内容を途中で変えることはないですよね。モンゴル人は時間を守らないし、約束した内容が変わるのはよくあることなんです。

―たしかに、「時間」と「約束」の概念の違いは、モンゴル人と日本人が最も戸惑いを感じる部分だと思います・・・。モンゴルは騎馬民族&遊牧生活、日本は農耕民族&定住生活にルーツがあるわけですから、違っていて当然かもしれません。このような違いを楽しみつつ、郷に入っては郷に従うことが異文化に対してオープンになる秘訣ですね。

 

以上、今回はジャフランさんに留学生活についてお話を伺いました。

次回はジャフランさんの日本企業での勤務経験、モンゴル帰国後のご活躍についてお伝えします。モンゴルでのビジネスやモンゴル旅行に関心のある方に役立つお話ばかりなので、是非ご期待ください。

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Mr. Javkhlan Khurelbaatar

出身:ウールハンガイ県ホジルト市

略歴:2007年、モンゴル人文大学在学中に立命館アジア太平洋大学国際経営学部の奨学生として来日。留学中は、ホームステイ、アルバイトを経験、また、バックパッカーとして27か国以上を訪問した。卒業後は明治26年創業の株式会社イシダへ入社し、国内外の営業マンとして世界を飛び回る。2014年にモンゴルへ帰国後、JICAの人材育成プロジェクトに携わりながら、自身の経験を活かしゲストハウス経営をスタートさせた。

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この記事を書いた人write

鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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