モーレ・ポブラーノを、知っていますか?

―旅ってつまり、美味しいってこと

旅の醍醐味のひとつと言えば、各国グルメとの出会い。

この日はメキシコシティからプエブラへの移動日。滞在先のAirbnbで出会ったメキシコ人のアルマちゃんが「私の故郷のプエブラ最高なの!メキシコ料理の発祥の地って呼ばれてて、ここのモーレは絶対に食べなきゃ!!」と熱烈に推してくれたので、食い意地の塊である私の希望でプエブラ行きを決めた。

 

―「モーレ」を求めて、プエブラへ
やってきたのはComalという二階建てのレストラン。底抜けに明るいメキシコ色で溢れる店内に足を踏み入れれば、脳みそにテキーラを浴びたような恍惚感が襲う。心も胃袋も踊る。

食欲全開でメニューを開くも、全てスペイン語なのでよく分からない。必ず食べると決めていた「モーレ」の写真を店員さんに見せ、さらにトマトとエッグの何かであるとだけ解読できたメニューをオーダーする。

間もなく、付け合わせのトルティーヤチップスと4種類のソースが運ばれてきた。旨い、酸っぱい、ちょい辛、激辛の4種類。激辛以外の3つをチップスにたんまりと乗せ、口へ運ぶ。食べ始めると一気食いのクセがある私の手と口はせっせと働き続けた。

 

―初対面からの、プレイボール

チップスが底をついたころ、ついに目の前に現れたモーレ・ポブラーノ

見た瞬間、私の食欲の神様がきょとん顔したのが分かった。

焦茶色のソースに、チキンが丸っと溺れている。それ以外付け合わせらしきものは見当たらず、彩りもゼロ。どうやって食べるのか、食べて良いものなのか、食欲の神様を困惑させたままソースをひとなめした。

甘くて、辛くて、苦くて、まろったい。

ストライクともボールとも取れず、私の舌はその場に立ち尽くし最初の速球を見送った。これまでの「美味い・不味い」の判断基準では測れない味があるなんて。やっぱり、世界は広かったんだ!再度バッターボックスに立ち、次はチキンとソースを絡め口に運んでみる。

今度は、打った。抜けた。一塁まで走った。

モーレ・ポブラーノ投手との熱戦は一口ごとに熱を帯びた。同じ味を食べているはずなのに、毎回変化球が飛んでくる。使われたことのない味覚と細胞が勢いよく目覚めたのを感じる。チョコレート、唐辛子、シナモン、ニンニクetc、etcを混ぜ合わせたという魅惑のモーレは、間違いなく今日のMVPだ。感動を、ありがとう。

初戦を見事を終えた私達はお互いを抱きしめながら健闘を讃え合い、モーレはすっかりこの身に吸収されていった。

熱い、熱い、一日だった。

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

早稲田大学国際教養学部、政治学研究科卒、モンゴル国立大学留学。
アクセンチュア株式会社、外務省、日本国際協力センター(JICE)、在モンゴル日本大使館にて勤務。

幼少期に1人の留学生と出会ったことがきっかけで、いつのまにかモンゴル尽くしの人生に。2022年6月からは世界一周の旅に出発。自身のウェブサイトKANO LABO(カノラボ)
https://kanolabo.comで旅のコラムや旅情報を発信中。
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Instagram: @kano_labo
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