今しか食べられない、モンゴル珍味

前回の記事はご覧頂けたでしょうか?
読んでくださった皆様、途中でショッキングな表現があったかと思いますが、淀みなく読み進められたでしょうか。特に男性の皆様、もしかすると身が縮こまる思いをされた方もいたのではと、勝手に心配しております。問題の一文は、こちら。
“今でこそ馬乳酒でも馬の睾丸でも出されたものは何でも頂きますが、当時の私は何も知らないモンゴル初心者です。”
 
もう少しフォーカスしてみましょう。
 …馬の睾丸でも出されたものは何でも頂きます…”
 
サラッと書きましたが、「馬の睾丸」。メンズの馬はメンズの人類以上に立派なものをお持ちです。そして、それを食してしまうのが私達ニンゲン(というか、モンゴル人)。
この珍味を味わったことがある人が日本に一体何人いるのか気になるところですが、食レポをできる希少な日本人として記しておきたいと思います。
 
まず、なぜ睾丸を取り出す必要があるのか。皆さんもご存知のとおり、モンゴルの遊牧民は家畜と共に暮らします。家畜というのは、羊、ヤギ、馬、牛、そしてラクダ。モンゴルではこれらの動物を「五畜」と呼びます。この「五畜」の皆さんは、1匹では行動しません。群れを作り、仲間と共に生きています。「五畜」の中でも、モンゴル人が最も愛着を持ち大切にしているのが馬です。遊牧民にルーツを持つモンゴル人は馬に乗り、馬で駆け、馬と共に生きています。都市部で暮らす人々の中には馬に乗れない、乗ったことがない人も増えていますが、それでも特別な絆を感じています。
 
馬の群れには「リーダー」がいます。その群れの中で最も強い雄馬のことです。この雄馬の強いリーダーシップが発揮されてこそ、馬達は狼から身を守り合い、良い草を食べ、丈夫な子孫を残すことができるのです。遊牧民の仕事のひとつは、このリーダー馬を他の追随を許さぬカリスマにすること。人間であれば自己啓発本を読ませたり、経営セミナーに行かせてみたり、山籠りさせて能力の開花を図るところですが、馬にそんな悠長な方法は通用しません。では一体どうするか?
 
リーダー以外の馬の睾丸を取る。
 
強制的に男としての能力を奪い、リーダーに服従させる。そして、雌馬に手を出したりすることのないようにする。
こんなハードな方法を取って、強い群れを維持しているのです。
社長以外の男性社員は全員、長年苦楽を共にした自分の一部を献上しなければいけない。そんな会社、絶対に嫌ですね・・・。
モンゴルの草原暮らしは人間にとっても動物にとっても想像以上にハードです。
 
さて、この取って集められたものは、モンゴル語で「ザサー」と呼ばれモンゴル人男性の大好物(!?)だとか。なんでも、食べると精力がつくらしいですよ(そりゃそうだ)。とても貴重なもの且つ草原で大人気なので、モンゴル人でも食べたことがある人は少数だそう。外国人で女性の私が「この前ザサー食べてさぁ・・・」という話をしたときの彼らの驚きと羨望と興奮が入り混じった顔を忘れられません。「ザサーを食べた日本人・女」ということで、しばらくすべらない話として使っていました。
 
このザサーを食べることができるのは、長い冬が終わり草原に新たな命が誕生する春の季節。モンゴルの春は風が強く黄砂が舞うのでベストシーズンとは言えませんが、もう一歩ディープなモンゴルワールドを体験するなら春です。ザサーです。
私はこれまで馬・羊・ヤギ・牛のザサーはコンプリートしてきました。残るはラクダ。五畜を制覇したら、またご報告します!
 
 
 
 

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

早稲田大学国際教養学部、政治学研究科卒、モンゴル国立大学留学。
アクセンチュア株式会社、外務省、日本国際協力センター(JICE)、在モンゴル日本大使館にて勤務。

幼少期に1人の留学生と出会ったことがきっかけで、いつのまにかモンゴル尽くしの人生に。2022年6月からは世界一周の旅に出発。自身のウェブサイトKANO LABO(カノラボ)
https://kanolabo.comで旅のコラムや旅情報を発信中。
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