並べて眺めてみた!モンゴルとスリランカー⑦赤ちゃんかわいくない宣言。その心は?

モンゴルの遊牧民のお宅におじゃましたときのこと。

その家の赤ちゃんが生まれたばかりということで、私も一緒にお祝いさせてもらいました。

モンゴルでは、生まれたばかりの赤ちゃんは布を何重にもして、ぐるぐる巻きの状態にしてくるみます。

ぐるぐるの中からぴょこんと出した頭、真っ赤なほっぺ、小さなおちょぼ口を見れば、どんな屈強な遊牧民や力士も一瞬でとろけてしまうでしょう。

私も思わず「かわいい・・・!!」と言いかけましたが、実は、ここで「かわいい」は言ってはいけないのです。

モンゴルでは、生まれたばかりの赤ちゃんに対して「かわいい」や「良い子」といったポジティブなワードを言うと、悪魔が来てさらっていくと考えられています。

これは昔の日本でも起きたことですが、自然環境の過酷なモンゴルでは子どもが生まれても大きくなる前に亡くなってしまうことが珍しくありませんでした。なので、赤ちゃんを災いから守るために、心の中ではどうしようもなくかわいいと思いながらも、口に出しては言わないのです。

目を細めて明らかにキュンキュンしているはずなのに、わざと「あらぁ、この子ブサイクねぇ~」と言ったりするので、この文化を知らないとその場で凍り付くことでしょう。

そしてもっと驚きなのは、名前の付け方。

この「悪魔よけ」の考え方は名付けにも波及していて、モンゴルにはこんな名前の人がいるんです。

 

ネルグイさん(「名無し」さん)

エネビシさん(「これじゃない」さん)

テルビシさん(「あれじゃない」さん)

フンビシさん(「人じゃない」さん)

 

どれもこれも衝撃的な名前ですが、実際にこういう名前の人は大勢います。

「人じゃない」なんて、なんて人でなしな名前の付け方をするんだと思ってしまいますが、既に風習として社会に浸透した結果、モンゴル人の親心・愛情の表れとして受け取られています。

日本でも過度なキラキラネームや悪意がある(と社会的に見なされる)名前について物議を呼んだことがありました。

愛情表現の仕方は人それぞれですが、自分が所属する社会に受け入れられないことには愛が愛として在ることは難しいというわけです。

そしてなんと、スリランカでも赤ちゃんを褒めない文化がありました。

モンゴルとはちょっと違ったロジックですが、赤ちゃんに「かわいい」と言うと、うらやましがられ、そして妬まれ、ジェラシーの心が災いを引き起こすと考えられているというから驚きです。

「赤ちゃんのかわいさを妬むなんてどうかしてるだろ・・・」とスリランカ素人の私は思ってしまいましたが、どうやらスリランカ社会では実際にジェラシーが様々なトラブルの種になるとのこと。

これはもちろん大人の世界での話ですが、そんなジェラシー社会で生きるご両親の親心を尊重して、赤ちゃんへの「かわいい」発言は控えようと思います。

ところ変われば愛情表現も様々ですね。

 

この記事を書いた人write

鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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