並べて眺めてみた!モンゴルとスリランカー②酒とココナッツと男と女

―草原から生まれるアルコール・エリート

モンゴルでの日々というと、酒がらみの情景ばかりが浮かぶ。

モンゴル人は、とにかく酒に強い。まだよちよち歩きの頃から、草原搾り・発酵ホヤホヤの馬乳酒を飲み始め、アルコール・エリートとしての英才教育を受けて育つ。よちよちがヨロヨロになった頃、目の前に転がっているのは哺乳瓶ではなくウォッカの空き瓶。私のような外国人は、「チンギス・ゴールド」と綴られた黄金のウォッカ瓶を何本空けたかで、モンゴル愛と忠誠心が試される。少なくとも私はこれまでにそういうプレッシャーという名の期待(日本ではアルハラに当たる)を幾度となく感じ、空き瓶を献上してきた。

 

―ラテン系・新橋系カルチャー

酒に強いのは屈強なモンゴル人男性だけではない。女性も同じだ。同じどころか、ウランバートル中心部に並ぶ小洒落たバーやレストランに行けば、7割方が女子会のテーブルで埋まっている。ボディコンシャスな服装で集まった彼女たちのテーブルでは、巨大ジョッキと空のワインボトルが次々とテーブル脇に追いやられていく。早口で語気の強いモンゴル語に酒が混ざると、喉の渇きが促進されてさらに飲みたくなるのかもしれない(個人調べ)。女性たちの豪快な笑い声が飛び交うなか、残り1センチ弱のグラスに気づいた最も声の通る1人が反射的にウェイターを呼ぶ。コルクが抜けると共に歓声が鳴り響き、瞬く間に新たな空き瓶が増える。これがモンゴル人女性のアフター5だ。この雰囲気が、この人たちが、私は大好きだ。

元々モンゴル人はラテン系でアグレッシブだが「お酒の力」は彼らの情熱をさらに沸き立てる。カウンターを見れば派手な赤いシャツを着た男性が長身美女の瞳に話しかけ、ダンスフロアを見れば年齢など関係なく男女が躍り舞う。一歩外に出ればへべれけになったカップルや団体がもつれ合いながらタクシーに乗り込んでいる。ん?ここは、新橋だったかな?終電が無いため、新橋以上に夜は更ける。

 

―スリランカの酒事情

さて、スリランカの酒事情はと言うと、どうもあまり盛り上がっていない。「ライオンビール」というスリランカのビールはスッキリとした後味で、スリランカの蒸し暑い気候に合っている。「アラック」というココナッツ酒をブレンドした蒸留酒は、こっくりとした味わいで度数(33%くらい)の割には飲みやすく美味しい。「夏×ビーチ×ビール」とくればさぞアルコールが進むかと思いきや、スリランカに来てから飲酒量がみるみる減っているのはなぜだろうか。

 

―アルコールよりココナッツ

1つ目の要因は、このじっとりとした暑さだ。立っているだけで汗ばむ気候では、ビールを飲むよりシャワーを浴びたい。そしてその辺で採れたらしいココナッツのジュースで体温を下げながら喉を潤したい。今の私の体は、酒よりもココナッツだ。ちなみに、モンゴルとスリランカの現在の気温差は40度以上(モンゴル:-20度、スリランカ:26℃)。寒いところにいると、生きるためにもアルコールをより欲していたことがよく分かった。身体の芯を温めるため。そして、脳神経を乱して寒いことすら忘れ去ってしまうため。

 

―財布と体に優しいノンアル生活

2つ目の要因は、スリランカの人たちがそもそもあまりお酒を飲んでいないことだ。スリランカはタイやベトナムのような屋台文化ではなく、路上で食事や乾杯をしている光景は見られない。レストランは多く外食機会は充実しているものの、お酒を売るには高額なライセンスが必要なため多くの店が酒類そのものを提供していない。また、輸入品の酒類の値段が異様に高い。先に触れた「ライオンビール」は200円程で飲めるが、レストランでグラスワインを注文しようとしたら11000円弱という値段だった。モンゴルのノリで飲んでいては、こちらも財布がもたない。

スリランカの人々があまりお酒を飲まない背景には、宗教的な理由が大きいのだろう。敬虔な仏教徒が多いスリランカでは、「Poya day」と呼ばれるフルムーンの祝日は命あるものや酒は一切口にしないとされているし、普段から飲酒をしない人も多そうだ。特に女性だけでバーに行って一杯!というようなことは社会的にあまりよく思われていないようで、ここではモンゴルのような女子会は見かけない。

アルコール・エリートたちに鍛えてもらった身としては、モンゴルでの豪快な女子会が恋しい気持ちはあるものの、スリランカでのノンアル生活も悪くないかもしれない(ただし、期間限定)。

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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