中央ゴビの旅(3)砂漠に現る真夜中のトゲトゲ

ロヴォンチャンバ修道院の廃墟

さっきまで晴れていた空に陰りが出てきた。小雨で視界に靄がかかる。岩間を歩み進めた先には、白いポプラの群衆。ここにはかつて、有名なラマ(僧侶)が瞑想のために建てた神殿があったという。小雨の音に合わせて、ラマたちの祈りが聴こえる気がする・・・と思い耳をすませば、岩上で運転手のトルガさんが目を瞑り、体を揺すりながら「雨雨フレフレ~」と別の祈りを捧げていた。

それにしても、この不思議な感覚はどこから来るのか。不安や恐怖を感じるわけではない。でも、どこか何か気になる。周りを見渡すと、幹は真っ白、人間の目のようなコブだらけだの木が無言で佇んでいる。一度目が合うと、全てを見透かされているような気がした。どちらへ歩いても目が付いてくるので、開き直ってすべてを開示するしかなさそうだ。少しだけ目を閉じて、一緒に瞑想してみた。

 

ツァガーン・スワルガ

「モンゴルのグランドキャニオン」なる別名を持つ巨大な地層に到着した。「ツァガーン・スワルガ」とはモンゴル語で「白い仏塔」という意味だ。最大で高さ約60メートルにもなるマーブル模様の隆起が延々と続く。少しでも上に登ろうと急斜面に挑んだが、一度下を見た途端一瞬で足がすくんだ。この場所は昔々、海の底にあったらしい。今の姿になるまで、どんな景色を見てきたのだろうか。

この日の夕陽は、格別だった。真っ直ぐと伸びる地平線に吸い込まれていく太陽は、落ち切る寸前に強烈な光を放った。

 

真夜中の客人

星が綺麗に見える明るい夜だった。砂漠と空の境界線と眺めながら外で一杯やっていると、何ともいい気分。もう1本開けようと部屋に戻ると、外にいた夫が突然「おぉぉっ」っと叫んだ。何事かと思って外に飛び出ると、足元にこちらのお客様が。

ハリネズミなんて、初めてみた。人に慣れているのか、仲間だと思ったのか、全く怯えることなくちょこまかと寄ってくる。カメラを向けても、照明を当てても構えることなく、短い手足を夢中で動かして愛嬌を振りまいてくる。抱き上げたかったが、いくら可愛くてもそのハリを見て見ないふりするわけにはいかなかった。生まれたての我が子かと思うほどの勢いと情熱でその姿を写真に収めて、ハリネズミタイムは終了。再度グラスを片手に、砂漠に酔いを任せた。

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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