旧正月とパトロール部隊

2月12日~14日、モンゴルでは旧正月(モンゴル語ではツァガーン・サル、「白い月」の意味)のお祝いでした。ツァガーン・サルは、モンゴル人にとってナーダム(夏の祭典)と並んでとても重要な祭事です。去年に引き続き、今年もコロナウイルスの影響でツァガーン・サルにまつわる公式行事は全て中止・・・。ここ数日、1日に50人以上の感染者が出ていたこともあり、モンゴル政府は直前まで議論を重ねた結果、2月11日(大晦日)から23日までロックダウンすることを決定しました。しかも、ツァガーン・サル期間中である2月12日~14日に関しては、「家から出てはいけない」「人の家に行ってはいけない」「人を招待してはいけない」「家庭内での飲酒禁止」という超戒厳令を布いて、本来の「家族みんなで集まってワイワイ食べて飲んで楽しい正月!」の一切を禁じることに。しかし、パーティー大好き!飲むの大好き!!なモンゴル人を止めるには、それ相応の対策が必要です。この3日間、政府は警察官に加えて各省から公務員を集めて「パトロール隊」を結成し、街のありとあらゆるところに配置して人の出入りが無いかどうかチェックさせたのです。うちのアパートの下にも、腕に赤い腕章を付けたお兄さんが1日中立っていました。

外の気温はマイナス20度。国家の安全のためとはいえ、せっかくの正月祝いなのにこんな苦行・・・・心が痛みます。

今年はこんなイレギュラーなツァガーン・サルになってしまいましたが、本来はどうやってお祝いするのでしょう??事前準備~当日までの様子をご紹介します。

<事前準備>

・ボーズ(モンゴルの餃子)を作りまくる。1つの家庭で1000個なんていうのはざら。とにかくボーズを作っては外に出して自然冷凍しておく。(外はマイナス20度以下なので、キレイに凍ります。)

・ニースレル・サラダ(モンゴルのポテトサラダ)を作る。

・スーテーツァイ(モンゴルのミルクティー)を作る。

・アルヒ(ウォッカ)を買い込む。(ツァガーン・サル中はひたすらボーズを食べてアルヒで流し込むという流れを繰り返します。)

・ヘビン・ボーブを用意する。(揚げパンを重ねたもの。必ず奇数で重ねる。その上にアーロールやキャンディーを乗せます。)

・オーツ(羊の胴体!)を用意する。

・お客さんに渡すお土産(靴下やチョコレート、コップ、タバコなど)を買う。

・家をきれいにしておく。

・新しいデールや帽子を買う。

 

<当日>

・真新しいデールを来て、いざ親戚周りへ。家に着いたら、まずはその家の家長、年長者の人に「アマルバイノー」と言って頬でキスをしながらお正月の挨拶をする。このとき、「ハタグ」という布を手に持って、その上にお金を置く。(ハタグの色は挨拶をする相手によって変わります。お金は渡さない地域もあるそうです。)

・席に着いたら、勧められるがままボーズを食べ、注がれるがままアルヒを飲む。それをひたすら繰り返す。

・お腹が苦しくなって酔いがまわり、「そろそろか・・・」と思っても、許されるまでひたすら飲み食いする。

・いよいよ立ち上がることを許されたら、家主の人からお土産を頂いてお暇する。

・重い身体と千鳥足で次のお宅へ移動する。(1日平均10件は回るそう。)

 

もう、これは体験しないと分かりませんが、体内がものすごいことになります!モンゴル人いわく、「ボーズを消化するためにアルヒを飲む。アルヒで酔いつぶれないためにまたボーズを食べる。この繰り返しだから延々続けられる!」ということなのですが、そんな訳はなく。笑 モンゴル人も苦しくないはずはないのですが、この3日間で食べた分がその年の幸せや富になると言うので、ノンストップで食べ続けます。数年前に私が経験したツァガーン・サルでは、このボーズ⇔アルヒのラリーに馬乳酒が追加されて完全に胃腸がやられ、それはもう形容し難い苦しみを味わいました。

 

こちらの動画(Click!)では田舎のゲルの中でツァガーン・サルの準備をしている様子を見ることが出来ます。

来年こそは、あのパトロールのお兄さんも暖かい家の中でたらふくボーズとアルヒを飲み食いできることを願って・・・!!!!

 

 

 

この記事を書いた人write

鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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