突然の内閣総辞職と新首相の就任

1月21日、フレルスフ内閣が総辞職した。

事の発端は、19日にSNSで拡散した「出産直後の母親がコロナ陽性と判明し、産まれたばかりの子どもと一緒に極寒(-20度以下)のなか着の身着のままで救急車に乗せられ、隔離施設へ送られた」というニュース。
「お母さん」をとても大切にするモンゴル人の心情と、「出産を終えたばかりの母子を極寒のなか外に放り出した」という非人道的な対応がモンゴル国民の怒りに火を付け、翌20日のスフバータル広場での大規模デモへ発展した。
怒りの矛を納めようと、国家緊急事態長と保健大臣が慌てて辞任表明したかと思いきや、翌日にフレルスフ首相が「今回の事案は内閣連帯責任である」とし辞任を表明、内閣総辞職が決まったのだ。

モンゴルで初のコロナ国内感染者が発見されてから早2ヶ月。大規模なパンデミックは起きていないものの、毎日10~30名規模の新規感染者が出ている状況下でまさかの内閣総辞職とは、当事者以外誰が予想したであろうか。

加えて気になるのが、フレルスフ首相が去り際に残した「今回のデモを扇動したのはバトトルガ大統領である」というひと言。

・フレルスフ首相は今年の大統領選に出馬するため自ら首相を辞任する機会を窺っていたのでは?
・2020年の総選挙時にフレルスフ首相とバトトルガ大統領は「密約」を結んだとの噂があったが決裂したのか?
・そもそも、母子の写真は本物?誰が撮ったの??

人々の心の中に生まれた「かわいそうなお母さんと赤ちゃんへの同情」と「コロナ渦で溜まった鬱憤」を怒りに替えるのは容易いことだろう。その怒りの矛先はもちろん政府だ。
旧正月(ツァガーンサル)を控えて特に気を引き締めて感染予防対策を講じるべきこの大切な時期に、政府が揺らぐことで得をするのは一体誰なのか。

世間では様々な憶測が飛び交うなか、今日28日、新首相が決定した。
新首相に就任したのはフレルスフ政権で官房長官を務めたオヨンデルデネ、41歳。
オーストリアのクルツ首相(34歳)やフィンランドのマリン首相(35歳)など世界ではUNDER40がリーダーとして活躍する時代。若い年齢層が多いモンゴルでは特別珍しいわけではないが、オヨンエルデネ新首相は若手のホープと言えるのだろうか。フレルスフ元首相の思惑が見え隠れするなか、オヨンエルデネ新首相の誕生は期待値や能力によるものではなく、フレルスフ元首相にとって与しやすい人物だからだという見方が強い。

 

コロナの感染拡大に歯止めがかからず、今も県境・国境を封じて鎖国状態のモンゴル。

大統領選が控える今年、民意の下に国民を導くことのできるリーダーは誕生するのか。

動向を見守りたい。

 

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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