草原に春の訪れ

長ーい長い冬が終わって、モンゴルでもようやく春の陽気が続くようになってきました。とは言え、油断できないのがモンゴルの春。この時期、強風に紛れて中国からの黄砂が飛んでくるので、1日の終わりには髪も体も砂だらけになってしまうことも珍しくありません。また、日本に「女心と秋の空」という言葉があるように、モンゴルでは「女心と春の空」という言い回しがあります。モンゴルの「春の空」は晴れたり曇ったり雨が降ったり、そして時には雪が降って冬に逆戻りしたような日もある程です。日本の女心よりも若干激しさを増している気がしますが、いずれにしても変わりやすいってことですね。
さて、そんな気まぐれな春の季節ですが、モンゴルでは家畜の出産シーズンを迎えています。この仔牛は30分前に生まれたばかり。

小さな赤ちゃん達がトコトコ走るたびに、モンゴルの大自然が丸ごと新しい生命を歓迎している様子が伝わってきて、そこにいさせてもらえるだけでありがたい気持ちになります。こんな時だからこそ、自然との繋がりを感じることを求めているのかもしれません。
また、今この季節だからできることと言えば、『ヤギの毛刈り』。ヤギの毛と言えば、モンゴルの特産品でもあるカシミヤです。モンゴルの遊牧民は、馬・牛・ラクダ・ヤギ・羊を「五畜」と呼んで、生活を共にしてきました。昔から、羊・馬・ラクダの毛は編んでゲル作りに使ったりしていましたが、牛とヤギの毛は使われることがなかったそうです。それが近年、カシミヤが高級素材として販売されるようになってから一転、ヤギの毛が遊牧民の重要な収入源となりました。モンゴルのカシミヤが高く評価されること、遊牧民の収入源が増えることは喜ばれることですが、一方で新たな問題も。実は、ヤギは草を食べるときに根っこごと食べてしまうらしいんです。高額で売買されるカシミヤをより多く取るために遊牧民が意図的にヤギを増やした結果、自然のバランスが崩れてしまった。自然の恵みに感謝し、共存する道を選んできた遊牧民の価値観を変容させ生活に介入したのは、現代社会の物質主義的な側面であることは言うまでもありません。今まさに在り方が問われ自らの変容を促されている私達には、自己満足を超えた世界にコミットする覚悟が求められているのでしょう。このタイミングでモンゴルにいることは、私にとって何か意味がある気がします。日々の生活に埋もれるとつい忘れてしまいがちな、でもとっても大事なことを、モンゴルの自然は思い出させてくれるようです。

 

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鹿野 詩織
鹿野 詩織(かの・しおり)

8歳の頃、初めて出会った海外の友人がモンゴル人だったことがきっかけで、モンゴルに憧れを抱く。 早稲田大学国際教養学部在学中にモンゴル国立大学への留学が実現。 卒業後、アクセンチュア株式会社、外務省勤務を経て、日本国際協力センター(JICE)にて、モンゴルにおけるJICAの人材育成プロジェクトに携わる。 モンゴル滞在中は、孤児院支援、遊牧生活、起業も経験。 現在は早稲田大学公共経営大学院に在学し、モンゴル研究、通訳、執筆活動等を行っている。

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